センターサークルのその向こう-サッカー小説-

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サッカー小説

第2話。

神奈川県湘南地区に位置する市立松ノ瀬中が、そのサッカーが盛んな藤沢市の子供達が一手に集まるサッカー強豪校だったのはもう20年以上昔の話となっている。松ノ瀬中に集まっていた地域の才能ある子供達は姿を消した。同じ湘南地区にサッカー強豪校が「誕生」したためだ。Jリーグがはじまり、空前のサッカーブームが生まれた昨今、その初期の(後に大不況となる)第一次サッカーブームが93年の出来事だった。1993年当時、Jリーグ発足に睨みをつけた松ノ瀬中と同じ湘南地区に巨大な敷地を持つ湘南学苑は、サッカー推薦を90年より取り入れる事を決定する。サッカー強豪校となり、より生徒数を増やす事が目論みだと後に湘南学苑サッカー部を解雇された大湊は聞いている。

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91年より日本リーグで活躍経験のあるMF田辺宗一を監督に迎えいれる事が決定していた湘南学苑は「大昔の県一部リーグ程度の肩書きではこれ以上我が校では雇えない」という理由で、素質も何も無い生徒しか与えられなかった大湊はその実力を試されることもなくサッカー部監督を解雇される。教員としての大湊には何の不満もなかった湘南学苑は、教員としての将来を大湊に約束したが、齢57を迎える大湊にとってそれは魅力的な打診ではなく、またそれ以上に教育の現場である学苑の教育方針の不一致を感じた大湊は、生涯を共にしたサッカーよりも教育者として学苑に籍を置くことを嫌い、迷いなく学苑を去る。

そんな大湊を拾ったのが、皮肉にもサッカー古豪校の松ノ瀬中だったのだから、芸は身を助けるものだと自らの人生を省みて苦笑いを浮かべながら呟いた。


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