センターサークルのその向こう-サッカー小説-

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サッカー小説

第3話。

生涯をサッカーと共に過ごして来た自分にとって、仕事でサッカーに携わることが出来るというのは、意欲を掻き立てられるものであったが、松ノ瀬中を選んだのはサッカー古豪だからという意識はなく、またサッカー強豪校にしようなどという野心もない。単純に家からの距離が近く、また空気の良い高台に閑静な住宅街の中で最も高い位置に校舎を構えるその環境が気に入ったからだ。もっとも、より近い所にも中学校があったのにも関わらず、無意識に松ノ瀬中を選んだ事は、やはりどこかで自分の選択の中にはサッカーという要素が入り込んでいるのだろう。

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着任後すぐにサッカー部の顧問を任されたが、松ノ瀬中サッカー部は古豪という名すら似つかわしくない惨状を自分の目に焼き付けてくれた。松ノ瀬中サッカー部のここ数年の成績といえば、湘南地区を突破するのがやっとで、県大会に名前すら入らないのが常の、単なる地域の中学校そのものだったのだから当然と言えば当然なのかもしれない。

しかし、自分にすらわからないことが世の中おこるもので、大湊は自らの人生においてこの時ほど驚かされた事はきっと数えるほどしかない。着任の翌年に入部してきた子供達はそれまでの上級生より才能という器が一回り大きく見える子供達だったのだ。無論、身体の発育時期であるこの時期にとって一年という差は埋めることの出来ない程の実力差を生むもので、新入生と二年生に試合をさせたところで、結果は常に目に見えたものだったが、それでも新入生の基礎能力の高さは充分に見てとれるものだった。


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