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サッカーコラム

【考察】2次予選日本代表メンバー23人発表【柴崎と柏木とスーパーコンピューター】

日本代表メンバーが発表された。

■GK
西川周作
東口順昭
林彰洋

■DF
吉田麻也
槙野智章
森重真人
丸山祐市
酒井宏樹
長友佑都
藤春廣輝

■MF
長谷部誠
山口蛍
遠藤航
柏木陽介
香川真司
清武弘嗣

■FW
本田圭佑
南野拓実
原口元気
宇佐美貴史
岡崎慎司
武藤嘉紀
金崎夢生

多くの選手が入れ替わっているが、ハリルホジッチのコメントによると「他の選手にチャンスを与えたい」という意図のようだ。

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これまでの(一部の無能な監督でない限り)代表の流れからすれば、こういう場合でも残るのは「核となる選手」だ。それは当然で、ぜんぶの選手を入れ替えていたら新しい選手のテストにならない。ということは、香川や本田、岡崎らスタメンをはってきた選手はやはり核なのだろうし、今回選外になった昌子や水本は明確に「そうではないグループの選手」なのだろう。

武藤雄樹

そうなると苦しくなってくるのが浦和の武藤雄樹だろう。核となる選手以外を入れ替えてラージグループの中から選出したにも関わらず、そのタイミングですら呼ばれないということは、完全に選考対象から外れてしまった可能性が高い。

しばらく「じゃない方」と揶揄されてきた彼だが、いまでも得点を重ね良いパフォーマンスを維持している。しかし東アジアカップ以来、一度も招集されていない。これはとても不思議な話で、「東アジアカップ最大にして唯一の発見」とまで言われた武藤が一度も呼ばれず、怪我でチャンスがなかった同じ浦和の柏木はその後も目立った活躍をしているわけでもないのに、選ばれ続けている。(決して柏木が悪い選手というわけではないのであしからず)

テクニシャンタイプが多い中で、シャドーストライカータイプでありながら運動量豊富にピッチを動き回り「スペースメーク」「ボールを貰う方」が上手いタイプは現代表には貴重だと思うのだが、ハリルホジッチはもう彼を見切ってしまったのだろうか(ちなみに彼は高校時代はトップ下だった選手でドリブルやテクニックもじゅうぶんレベルの高いものを持っている)。

柴崎岳と柏木陽介

プレーメーカーとして大きな期待を受けていた柴崎が外れ、柏木は残った。両者について言及している。
ハリル監督「ものすごく期待」。"希少な能力"柏木を大絶賛
ハリル監督の"親心"、選外のMF柴崎に奮起促す「彼にはもっとできると言いたい」
ざっとまとめると、柏木を高く評価し大きな期待を寄せ、柴崎はいまのところ期待に応えられていないという評価をくだしたことになる。

柴崎といえばナビスコ杯決勝での活躍が記憶に新しい。大将:小笠原の横でボランチとしてきっちり守備、攻撃に貢献し鋭いパスも何本か出していた。Jリーグレベルであればじゅうぶんな活躍、貢献度だったといえる。

ただ、文句のつけようがないか、というと、ちょっとあやしい。
いや、才能に疑いの余地はない。しかし、物足りなさが残るのも事実。本来、MVPを取るべきは小笠原ではなく、柴崎だったはずだ。無論、鹿島が誇るレジスタ小笠原にケチのつけようなどないのだが、しかし年齢とともに衰えてきているのも事実。ナビスコ杯決勝こそ獅子奮迅の活躍だったが、以前であれば毎試合あのパフォーマンスを維持していた。圧倒的なフィジカルと確かなボール技術、そして戦術眼でフィールドを我が物にし、Jリーグでは他の追随を許さなかった。あのようなプレー、そしてナビスコ杯決勝のようなプレーは近年では久しく見ていなかった。今年36歳という大ベテランなのだから当然だし、そういうものだろう。だからこそ、ピッチの中心でエネルギッシュな活躍を見せるのは若手である方が好ましい(あくまでもクラブ観点であり、選手個人としてはいつだって大活躍が望ましい)。

実は、小笠原のいるこのクラブを選んでしまったことが、柴崎岳が抱える最大の問題なのではないかと思うのだ。そして小笠原も、さらに日本史上最高のプレーメーカーもいないクラブを選んだ柏木に、だからこそいまチャンスがめぐっているような気がしてしまう。


遠藤保仁と柴崎岳と柏木陽介

「日本史上最高のプレーメーカー」とは、まぎれもなく遠藤保仁その人のことである。ナビスコ杯決勝ではついに主導権を取り戻すことなく完敗してしまったが、しかし逆に彼がいるからこそ、ある時間では攻勢に出ることができたし、様々な個性をまとめあげチームとしてその体(テイ)を成させ、長谷川健太監督にすら「ヤットに任せておけば大丈夫」と言わしめるほどの存在感を放つ彼がいるからこそ、ガンバはガンバでいられる。彼はプレーメーカー以上でも以下でもなく、周りが勝負に(予測より遥かに)全敗すればどんなに彼がコントロールしようにも機能しなくなるし、盤上の駒が各所で予測通りの勝敗を見せれば彼のピッチ上での采配はその真価を発揮する。

つまり、遠藤保仁には日本史上でも数少ない「試合を読むスーパーコンピューター」が搭載されており、おそらくとしてそれは山口素弘、名波浩と代々受け継がれてきたものである。そして、現在のところその先には柴崎岳がいると思われてきた。いや、いまもそう思っているサッカーファンは多いだろう。

しかしそんなサッカーファンの想いとは裏腹に、柴崎岳は別の方向へと進化しようとしている。彼はチームの中央や中盤の後ろでゲームを組み立てることより、もう少し前に位置し機を見て攻めあがったり、ときにはドリブルを仕掛けたりと、もっとオールマイティに、そしてさらに攻撃的に振る舞うことを好んでいるように見える。それは、名波や遠藤が「でも、アイツはもう一列前のプレーヤーだよね」とコメントするところにも表れている。
物凄く強引に言えば、柴崎はバルセロナやスペインにおけるグアルディオラの系譜を継ぐシャビではなく、そのもう少し前で驚異的なテクニックとイマジネーションを武器に踊るイニエスタに近づいている。

おそらくこれは、横に小笠原満男という日本でも有数のプレーメーカーがいたからだろう。二人でゲームをつくると言えば聞こえはいいが、しかし実際のところ小笠原は「ドシっと構える」タイプである。そこからパスが出てくるとなれば、自ずとパスを受ける側になることも考えねばならない。さすれば、プレースタイルや嗜好にそれが反映されるのも当然のことだ。

一方で、柏木陽介である。
彼は押しも押されもせぬ司令塔として浦和に迎え入れられたわけだが、そこから広島とのサッカースタイルの違いにフィットできず苦悩の日々が続く。また、さらにボランチ宣言をするもミハイロ・ペトロヴィッチ監督と再びタッグを組むと広島時代と同じく2シャドーに据えられたり、ときにボランチに置かれたりとポジションが安定しない時期が続いたことで「ボランチとしてゲームを組み立てる」という職能を集中して磨くタイミングが得られないという不運も続いた。

しかし、昨年から浦和の戦力の変化によりボランチに定着して、浦和の浦和たるサッカーの具現者としてピッチに立っている。そこで、出色の出来を示し続け、現代表に呼ばれるほどになった。
皮肉な話だが、期待された柴崎岳より柏木陽介の方に「スーパーコンピューター」が搭載されようとしているのではないだろうか。


「スーパーコンピューター」と日本代表

おそらく、ハリルホジッチは柴崎にも柏木にも「スーパーコンピューター」を求めている。そして、柴崎にはそれが足りないから、今回呼ばれなかったのだろうと思う。
しかし、名波や遠藤が持つ試合を読む「スーパーコンピューター」はただのボランチのそれではない。ポジションは違えど現在の中村俊輔にももう一人の中村にも搭載されているであろうそれは、単純なボランチに備わるものではないし、逆にそれがあればボランチがつとまるわけでもない。これは、明晰な頭脳(サッカー脳)と超高精度な技術に、多彩な経験が出会うことで身につけることができる特殊能力なのだ。

柏木にその「スーパーコンピューター」が備わろうとしているのは、やはりチームの中で紆余曲折がありながらも、最終的にその役割に落ち着いたところが多きであろうし、柴崎岳がそうではない別の方向に向かおうとしているのも、やはりそういう役割をチームから与えられてないところが大きいと推測する。そして、柴崎にしても柏木にしても自らの意志だけで現在があるわけではなく、時代、チーム事情のめぐりあわせによるところが大きい。

ただ、柏木はもとからそういうプレーヤーだったわけではない。お世辞にも思慮深いと言えるタイプではないし、ボランチを目指すというのに「フリックでゴールチャンスをつくれるようになりたい」という謎発言をするタイプである。「スーパーコンピューター」とはゴールから逆算してプロセスを導き出し、その幾重にも重なるプロセスを90分という時間の中でさらにデザインするという思考や分析ができることを指し、つまるところ「すべては手段に過ぎない」という思考スタイルでなければ成立しない。その観点からすればこの柏木の発言はその時点で矛盾をきたしており、この段階ではやはり適性が乏しいことになる。

そして、我らが日本代表である。
サッカースタイルとしてボールも人も動くサッカーというのはもはやこれまでもこれから20年先も変わることはないだろう。その「ボールも人も動くサッカー」には、必ず、いや間違いなく「スーパーコンピューター」を搭載したプレーメーカーが必要不可欠だ。各所で忍者のように走り回る日本代表において、そのペース、方向、リズムをコントロールすることは絶対的に必要な要素であり、さらに複雑怪奇ともいえる組織構成、パスワークを誇る日本代表のそれは異常なほどの高難度なタスクであり、それにはどうしても「スーパーコンピューター」が必要だ。(徹底的にオートマティズムを導入した場合は除く)

その証拠に、これまで遠藤保仁がいるといないでは全く違う姿を日本代表は見せてきたし、アギーレジャパンにおいても、結局良いサッカーを見せ出したのは遠藤の復帰タイミングと同期する。そう、日本代表にはどうしたってこのタイプが必要なのだ。

時代のめぐりあわせにより、片方は期待とは違う方向に、片方は強く期待されていなかったにもかかわらず、表舞台に立つことになった。

いまもって柴崎岳には遠藤保仁の後継を任せられるほどの大きな大きなポテンシャルがあることに疑いの余地はない。小笠原がいないところへ行けば(それは欧州であるべきである)その方向に才能が花開くかもしれない。

そして柏木陽介にもその才能と資格はじゅうぶんにある。その思考回路の改善さえみれれば、運動量、テクニック、そしてレフティーというオプションまでつく柏木はうってつけの人材であることに疑いの余地はない。


今後、どんな監督が日本代表を指揮しようとも、柴崎岳と柏木陽介、そしてこの二人に青山敏弘を加えた3人はロシアW杯まで絶対に要注目だと、僕は思っている。


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