センターサークルのその向こう-サッカー小説-

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サッカーコラム

高校サッカー選手権も終わったので、過去20大会を振り返ってみるよ-その4-

高校サッカーの過去20大会振りかえってます。

その3はこちら。「高校サッカー選手権も終わったので、過去20大会を振り返ってみるよ-その3-

第87回(2008年度)【応援マネージャー:逢沢りな】

俗にいう「ハンパねぇ大会」である。(言われてないけど)

「ハンパねぇ」とは、とある現在まで語り継がれるストライカーに対して、対戦相手のDFが放った言葉だ。

正式にはこう。

「大迫半端ないって 後ろ向きのボールめっちゃトラップするもん。そんなんできひんやん普通」

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準々決勝で鹿児島城西とあたった滝川第二DFの中西隆裕くん(なんとなく君づけがしっくりくるのはなぜだろう)の試合後の言葉だ。この試合、2-6で彼は敗北するのだが、彼の気持ちはよくわかる。それほどに大迫はとんでもなく、止められなかった。これまで語ったとおり高校サッカーからクラブユースへと選手が流れていく時代の中で久々に表れた「本物」だった。

怪物・平山相太が持っていた2つの記録のうち「一大会における最多得点記録」を更新するのはこの大迫である(10得点)。

はっきり言って、大迫は日本近代サッカーにおけるパーフェクトなFWである。足元、スピード、上背、身体の使い方、得点感覚、ポストプレー、パスセンス、どれをとっても一級品。さらに彼にはこれまで幾度となく出てきた「怪物」「超高校級」には無いものがある。それは、そのクリエイティビティと強いメンタルだ。

これまでたくさんの消えていった「超高校級FW」と彼とでは、おそらくサッカーの技術そのものにそれほど大きな差は無かったと思う。いや、インパクトで言えばおそらく平山や田原の方が上だろう。ただ、大会で最も活躍したのは大迫だったし、そして、彼は、いまでもブンデスリーガで奮闘している。さらに彼は日本代表としてW杯にも出場した。

決してこれまで消えてきた選手が慢心していたとは思わない。しかし、様々な彼の発言、取材を読むとよくわかる。大迫は強いメンタルを持ちながらサッカーと向かい合い日々研究を積んでいる。非常に非常に研究熱心で、高いサッカー脳を持った選手だ。鹿島アントラーズという名門でありながら大きな壁のあるクラブを、そして一方で育成に優れたクラブを選んだのもそれゆえのものだろう。

鹿島デビュー直後は線が細く、センスは感じさせるもののボールがおさまらないことがたびたびあった。下位クラブなら良いのだが、日本代表クラスのDFにあたると何もさせてもらえない。横浜Fマリノス戦、中澤につかれた彼は何もできなかった。しかし、そのほんの数年後である。どんな相手にもグラつかず、そしてそのクリエイティビティで見事にボールをおさめる鹿島の大エースとなった彼がそこにいた。あの、あの中澤を手玉に取るプレーを僕は生で見たことがある。感動した。本当に感動した。

かくして彼はブラジルW杯に挑む日本代表に、本戦の約1年前という(スタメン候補に入るには)ギリギリで滑り込むことになる。あのオランダ戦のゴールは本当に鳥肌ものだった。彼はしかも、その日本代表に入り残るためにW杯イヤーの2014年にドイツへの移籍というとてもリスキーな選択をし、そして成功させる。これだ、これが大迫なのだ。

最近は代表に呼ばれていないが、また彼を代表で観たいと願っている。

第88回(2009年度)【応援マネージャー:川島海荷】

この大会は、やはりこの人抜きには語れないだろう。

いまや鹿島アントラーズの若き司令塔、柴崎岳の大会である。

実際のところ、実はこのとき彼はまだ2年生である。
大会の注目選手としては同じ青森山田の椎名(後に富山)、そして優勝することになる山梨学院大付の碓井(後に長崎)の方が注目されていたように思う。

だいたい3人並列か、結果が伴ったこととそして椎名が怪我をしていたことから碓井の方が注目されていたかもしれない。ただ、そうはいってもこのとき柴崎岳はまだ2年生である。決勝の両大将に並び称されるだけでも破格な扱いであり、実際、青森山田の中盤をコントロールしていたのは椎名ではなく柴崎だったと思う。(椎名はもう少し前で果敢に飛び出すタイプだったと記憶している)

さて、その柴崎が一躍(サッカー界で)時の人となるのは、大会後1月半ばのことである。なんと、鹿島アントラーズがまだ2年生の彼と正式契約をしたというのだから驚きだ

柴崎岳という選手は、実はそれほどわかりやすい選手ではない。破壊的なドリブルがあるわけではないし(決して下手ではないが)、一撃必殺のパスが売りでもない。驚異的なシュート力があるわけでもないし、圧倒的なスピードがあるわけでもない。柴崎の最もわかりやすい要素があるとすればそれはたぶん容姿だろう。むしろそれ以外は非常にわかりづらい選手である(もちろん程度問題で、中盤の汗かき役タイプよりはよっぽどわかりやすいが)。

柴崎岳が最も優れているのはボールタッチでもドリブルでもパスでもない。それらすべてを道具として適切に扱える「状況判断能力」である。彼の周りを見る目、複数の選択肢から適切なものを選び出し実行する能力は、この世代では群を抜いている。だが、それはサッカーに詳しくない人にはわかりやすい能力ではない。この能力の日本史上最高レベルで持っているのは遠藤保仁だと思っているが、だからこそ柴崎は彼の後継者と期待されているのだろう。

その柴崎を、あのスカウトや育成に秀でた鹿島がなんと2年生で契約したというのは、選手、クラブ双方がもっと評価されても良い事案だと思う。それ故に、彼がまだ「鹿島の柴崎」にとどまっているのは、大変むずがゆい次第である。日本代表の7番は彼こそふさわしい。

柴崎についてはこちらでも長々と書いているので良ければどうぞ。「【考察】2次予選日本代表メンバー23人発表【柴崎と柏木とスーパーコンピューター】

第89回(2010年度)【応援マネージャー:広瀬アリス】

ごめんなさい、あまり強い記憶にない大会その2です。
ほとんど覚えていない・・・。おそらくプライベートの方で忙しくてあまり見てなかったのだと思う。ただ、全く記憶が無いわけではないので多少なりとも書いておこう。

まず、この大会は前述の通りすでにプロ内定をとっていた柴崎岳の大会になるはずだった。2年時にすでに準優勝を達成し、残るは一番上の頂のみ、さらにJリーグ屈指の名門鹿島アントラーズ内定となれば大会No.1選手として扱われるのは当然であり、もっといえばそうなるべきだったとも思う。だが、柴崎率いる青森山田は2戦目の滝川第二にあっさりと敗北して大会から姿を消す。これがもう本当にあっさりと負けるもんだから、おそらくマスコミというか日テレは相当困っただろう。

もう一人、フィーバーするはずだった選手がいる。

宮市亮だ。こちらは、なんと大会直前の12月にあのプレミアの超名門アーセナルと契約を結んだというのだからこれは大変だ。高校選手権に、高校生に混じってプレミアリーグの選手が出場するようなものなのだから(いや、宮市も高校生だったんだけどw)。だがしかし、こちらも初戦であっさりと敗戦してしまうのである。なんとまあ、日テレ泣かせだことw

そして書いているうちに思い出してくるから不思議なものだ。この大会の決勝は久御山と滝川第二。久御山は非常にテクニカルで先進的なサッカーを繰り広げていたのに対し、その繊細なサッカーをぶち壊すかのようなダイナミックなサッカーを展開する滝川第二との戦いで、やたら得点が入ったゲームだった。

が、おそらくそれほど記憶にないのは「ほうほうそうかそうか」と既視感のある決勝だったからだろう。

これは2大スターが早々に姿を消す展開に日テレだけでなく自分もガックリきたこともあるのだろう・・・。ただ、それ以外にも良い選手はいた。ここで触れておくとすれば、柴崎の陰に隠れがちな、同じ鹿島に進んだ梅鉢も捨てがたいところだが(大会前に怪我をして満足にプレーできなかった)、浦和に進むことになる小島秀仁に触れておきたい

浦和では層の厚いボランチ陣の中で、なかなかチャンスをつかめずにいたが、その能力は非常に高いものがある。長短のパスでゲームを組み立て、積極的に飛び出して得点も奪える司令塔タイプのボランチだ。流経大柏にPKで敗北してしまうのだが、この大会のNo.1ボランチは小島秀仁だったと思っている(ちなみに名前はシュウトと読む)。

その小島秀仁は前橋育英の選手である。

桐光学園の10番がファンタジスタの優良血統ならば、前橋育英(のとくに14番)は日本高校サッカーにおける高性能ボランチの生産大国である。ポジション的にどうしても桐光学園や帝京高校の10番ほど騒がれないが、そのクオリティは素晴らしいものがある。なんといっても、前橋育英は「日本で最初の"ボランチ"」と言われたあの山口素弘の出身校なのだ。

それ以外にも多数の有力ボランチを輩出している。松下裕樹、青木剛、細貝萌、青木拓矢、そして小島秀仁。

いったいなぜ前橋育英に優秀なボランチが育つのか、までは実は良く知らないwのだが(知ってる人おしえてください)、「前橋育英はボランチ大国」というのは知っておいて損はないと思う。

さて、その小島だが、浦和で活躍できなかったものの、昨シーズン(2015シーズン)の半ばから愛媛に移籍したようだ。調べてみると、愛媛ではどうやらコンスタントに試合に出ている。これはこれで注目だ。なぜなら、愛媛FCといえばあの広島の元10番、ファンタジスタ高萩洋次郎が輝いたクラブである。

広島生え抜きの選手としてトップチームにあがったものの、出場機会に恵まれずくすぶっていた高萩が、レンタルとして出されたのが愛媛FCであり、高萩はそこで「愛媛のグアルディオラ」と評されるほどに中盤の底でタクトを振ることになる。そう、ちょうど今の小島と重なるのだ。その後の高萩の活躍はサッカーファンならご存じの通りだろう(しかし「俺は海外に行きたい」と一時期から公言してきた彼が、てっきり欧州のどこかに行きたいんだと思ったらオーストラリアに行くという我々の想像の斜め上の選択は彼らしいというか不思議な選手である)。

コンスタントに試合に出ているというならば、だからこれは注目すべきことなのである。

愛媛の小島、ぜひ今後注目していただきたい。

第90回(2011年度)【応援マネージャー:川口春奈】

正直に言うと、このあたりから非常に書くのが難しい大会になってくる。決してつまらなかったわけではないのだが、本当にどこの高校も似たようなサッカーをするようになってきたのだ

システムは4-4-2か4-2-3-1。もしくはそこから派生した4-3-3。相手との力関係によってDFラインの高い低いはあるが、基本はハイプレスをかけそこからショートパスを繋いでゴールに迫る。速攻ができないときは丁寧にパスを繋いで崩しにかかる。ある意味これは正しいことで、日本サッカーのスタイルそのものがこれなのだから、仕方ないと言えば仕方ないし、喜ばしいと言えば喜ばしい。我が国のサッカースタイルが固まりつつあるのだから。

さて、そんな中でも今大会はなぜかやたらと有望なFWがたくさん出てきた大会である。鈴木武蔵(後に新潟)、浅野拓磨(後に広島)、白崎凌兵(後に清水。厳密には前回大会にも出ていたはずだ)、清水商業には風間宏矢(後に川崎F)もいた。そして、中でも語るべきは和泉竜司(2016より名古屋)だろう

和泉竜司は「いわゆる天才」である。
これまで触れてきた超高校級、怪物、半端ない・・・とはだいぶ違う。
テクニックはあるが上背は無い。大迫のようなあくまでも最前線の柱というベースからオールマイティさとクリエイティビティで勝負するタイプでもない。そして、そういう意味では和泉竜司はとてもわかりやすい。スピード、ドリブル、パス、シュートである。
もちろん頭の悪い選手ではない。しかし、戦術の中で組み立てのピースとして動く姿が象徴的な選手ではない。秀でているのはあくまでもボールを持った時の(もしくはそれまでの過程も含めた)コンテンツである。かといって、大前のようなミニマムさを活かした典型的な弾丸アタッカーでもない。

和泉竜司はやはり「いわゆる天才」なのである。
スピード、テクニック、センスを併せ持つことで多彩でありながら、相手陣内を切り裂くスピードドリブルであったり、柔らかいタッチからのパスであったり、敵の逆をつくセンスであったり、非常にわかりやすいコンテンツを発することのできる選手だ。言い換えれば「マンガに出てくる典型的なエースキャラ」である
何でもできて、決して体格で勝負しているわけではなく、しかしただ単にスピードがあるだけでも、生粋のドリブラーというわけでもない。これを言葉にすると「いわゆる天才」となる。もっともっと簡単に言うと「ウイニングイレブンで最も多くの人に使いやすい使われやすいFW」。「それはビアホフだろう」という人がいるかもしれないが、あれは古き良きウイニングイレブンのバグである。

和泉竜司は流れの中でアクセントをつけられるストライカーである。ゆえに天才と表現する。この大会であれば、浅野拓磨も取り上げるべきなのだろうが、彼の場合はもうすでにA代表に入るほど世に出ているし、選手権からそれほど時間も経っていないため、さほどスタイル的な変化もないだろう(もちろん、スピードスターが佐藤寿人の元でワンタッチゴールの姿を学んだことはとてつもない進化だと捉えているが)。

だからあえて大きく取り上げないでおくが、その同じ「スピード」を高い次元で有する浅野拓磨と和泉竜司であるが、二人は似て非なるプレイヤーである。和泉竜司は前述のようにスピード単体が優れているわけではなくそのトータルバランスとそれを駆使して繰り出されるアクセント、言い換えれば天才っぷりがウリであり、そういう意味ではこの二人が同じピッチに立ちコンビネーションを磨けばとても相性の良い驚異的な2トップになり得るかもしれない。たとえばそれはトッティとインザーギのように、ラウルとモリエンテスのように、森島と西澤のように。

残念ながら和泉竜司は現在リオ五輪出場に向けて戦っているU23には選ばれていないが、次のシーズンから名古屋でプレーすることになっている。もしそこで大爆発がおきれば、本大会には選ばれる可能性がじゅうぶんにある。
懸念があるとすれば、ラウルがそうであったように、多彩であるがゆえに様々なポジションがこなせてしまうため、MFで起用される可能性もある。それが絶対ダメだというわけではないが、個人的には和泉はFWとして、2トップの一角として少し下がり目から勝負するのが最も生きると思うし、何よりそのタイプは日本にとても少ないと思っている。なので、そこで頑張ってほしいというのが個人的願望だ(ただ、2トップの1.5列目はA代表にポジションが無いのだが)。


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